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特集 臓器移植――限界と挑戦
はじめに
Introduction
大段 秀樹
1
Hideki OHDAN
1
1広島大学大学院医系科学研究科消化器・移植外科学
pp.675-675
発行日 2021年11月13日
Published Date 2021/11/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27907675
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- Abstract 文献概要
2009年に脳死移植を可能とする「臓器移植法」の改正が行われ,2010年7月以降は,脳死移植は本人が提供拒否の意思を示していないかぎりは家族の同意が得られれば認められるようになった.しかし改正法の施行にもかかわらず,脳死からの臓器提供は期待したほどには増加していない.わが国の臓器移植はいまだに生体ドナーからの移植が主流であり,移植医療のさらなる普及のために社会的な課題は山積している.生体ドナーに依存する,いわば片輪走行のため,臓器の総移植症例数は先進諸国には及ばない.しかし,移植成績そのものは諸外国と比べ同等か,むしろ良好である.脳死下臓器提供の普及に課題は残るが,20世紀の奇跡の医療といわれた臓器移植は,優れた免疫抑制薬の開発や医療技術・体制の向上を経て,今や成熟期を迎えている.21世紀となった今,臓器不全に対する移植医療のブレイクスルーとして期待がかかる課題としては,高齢者や担癌患者への適応拡大や免疫寛容の誘導,革新的な臓器保存方法の開発,再生医療の新展開などがあげられる.
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