徹底分析シリーズ 周術期抗菌薬とその周辺
外科医の立場から—術前・術後のSSI予防と抗菌薬
中島 一記
1
,
大段 秀樹
2
,
大毛 宏喜
3
Ikki NAKASHIMA
1
,
Hideki OHDAN
2
,
Hiroki OHGE
3
1広島大学大学院医系科学研究科 外科学/消化器・移植外科学
2広島大学大学院医系科学研究科 消化器・移植外科学
3広島大学病院 感染症科
pp.258-262
発行日 2022年3月1日
Published Date 2022/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202200
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周術期合併症の予防のためにこれまでさまざまな対策が講じられているが,患者ごとに年齢,基礎疾患,術前の栄養状態,術前治療の有無など,術前の全身状態は一律ではなく,手術部位感染surgical site infection(SSI)をはじめとする術後合併症を一定の割合で経験する。術後感染性合併症を発症すると入院期間の延長や患者の精神的・経済的負担が増加し,担癌患者であれば術後治療の開始の遅れなどにより予後にも影響を与える。
厚生労働省院内感染サーベイランス事業(Japan Nosocomial Infections Surveillance:JANIS)の公開情報1)によると,2020年のSSI発生率は,全手術では4.4%であるが,消化管手術全体で7.1%であり,食道手術15%,胃手術7.3%,肝胆膵手術13.2%,結腸手術8.8%,直腸手術11.1%であった。消化器外科手術では依然としてSSIを経験する頻度が高い。
SSI発症を低減させるために術前・術中・術後とさまざまな対策が講じられる。予防抗菌薬投与もその一つであり,とても重要な役割を担っている。
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