サルコペニアにおけるミトコンドリアの役割

The role of mitochondria in sarcopenia

　サルコペニアは筋量減少よりも筋の質的変化を反映させるべく，筋力など筋機能で間接的に評価するアルゴリズムが発表された．老化筋の質的変化を病理学的な定義で明確にすることは，サルコペニアのメカニズム，バイオマーカーによる早期診断，予防，治療法の開発に必要である．筋は，代謝と収縮特性の違いによって酸化系代謝の遅筋線維や解糖系代謝の速筋線維など，複数の筋線維タイプからなるヘテロな細胞集団である．老化筋では遅筋線維の割合が増えるが，筋の質的変化を理解するうえで重要な手がかりとなる．老化筋のミトコンドリアの機能と構造変化に関してこれまで相反するさまざまな報告があり，混乱していた．ミトコンドリアはエネルギー産生と供給に必要であるが，筋線維内のミトコンドリアは連結してネットワークを形成しており，速筋と遅筋で構造が異なることが最近報告された．本稿では，筆者らの研究成果も含めて最新の筋のミトコンドリア研究について紹介する．