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第1土曜特集 パーキンソン病を解剖する――過去,現在,そして未来へ
新たな治療法
パーキンソン病における疾患修飾療法の可能性
Disease modifying therapy for Parkinson’s disease
波田野 琢
1
,
服部 信孝
1
Taku HATANO
1
,
Nobutaka HATTORI
1
1順天堂大学大学院医学研究科神経学
キーワード:
α-シヌクレイン(α-syn)
,
疾患修飾療法
,
グルコセレブロシダーゼ
Keyword:
α-シヌクレイン(α-syn)
,
疾患修飾療法
,
グルコセレブロシダーゼ
pp.920-925
発行日 2021年9月4日
Published Date 2021/9/4
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27810920
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パーキンソン病(PD)は黒質ドパミン神経細胞が比較的選択的に脱落することで,運動機能障害が前景となる神経変性疾患である.レビー小体が本疾患の特異的な病理学的マーカーとして確立されているが,この凝集体の主な構成タンパクはα-シヌクレイン(α-syn)である.すなわち,α-synの凝集により引き起こされる神経毒性が本疾患の病態の鍵になっていると考えられる.α-synはα-ヘリックス構造をもつ両親媒性のタンパクであり,膜脂質に弱く結合し,細胞質ではダイナミックに動くため特定の構造はとらない.一度,βシート構造をもつ異常構造体へ変換すると,正常な構造をもつα-synを異常構造へ変換し凝集の連鎖が生じる.また,この凝集傾向のあるα-synは神経細胞間を伝って広がることが知られており,プリオンタンパク質のような性質をもつことが明らかになっている.さらにα-synの凝集は膜輸送を障害し,ミトコンドリアやリソソームの機能障害などを引き起こす可能性が考えられている.また,遺伝性PDの原因遺伝子の解析は本疾患の病態を理解するうえで有用であるが,これらの遺伝子がコードするタンパク質はミトコンドリア,脂質代謝,タンパク分解(オートファジー系およびユビキチンプロテアソーム系),酸化ストレスなどの機能をもつ.つまり,これらの機能を正常化する治療が疾患修飾療法につながると考えられる.本稿ではPDの病態から考えられる疾患修飾療法についてまとめる.
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