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第1土曜特集 構造生命科学による創薬への挑戦
タンパク質工学から創薬へ
指向性進化法による高親和性ACE2創出とCOVID-19創薬展開
High affinity ACE2 development by directed evolution and its application for COVID-19 therapeutics
星野 温
1
,
有森 貴夫
2
Atsushi HOSHINO
1
,
Takao ARIMORI
2
1京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学
2大阪大学蛋白質研究所分子創製学研究室
キーワード:
指向性進化法
,
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
,
変異株
,
エスケープ変異
,
ACE2
Keyword:
指向性進化法
,
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
,
変異株
,
エスケープ変異
,
ACE2
pp.588-595
発行日 2021年8月7日
Published Date 2021/8/7
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27806588
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全世界に広がり人類を脅かすパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は変異株の出現により新たな局面を迎えている.筆者らは,治療薬の開発として新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の受容体であるACE2に着目し,指向性進化法とよばれるタンパク質工学的手法によりウイルスへの親和性を高めるアミノ酸変異を導入することで,その結合力を約100倍まで高めることに成功した.この高親和性ACE2に抗体のFcを結合し製剤化したものは,高いウイルス中和活性とハムスターのCOVID-19モデルで顕著な治療効果が認められた.ウイルス治療薬ではエスケープ変異とよばれる治療薬に対して耐性を持つ変異株の出現が問題となるが,本製剤に結合せずに “エスケープ” する変異株は細胞表面のACE2にも結合できず感染力を失うこととなり,実質的な耐性株が出現しにくいと考えられる.実際のウイルス培養実験においても長期間の本製剤曝露でエスケープ変異は発生せず,現在脅威となっている変異株にも中和活性は低下しないため,高親和性ACE2製剤は一度開発すれば長期間使用が可能な治療薬となる.
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