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第1土曜特集 構造生命科学による創薬への挑戦
構造解析から創薬へ
グルコース-6-リン酸脱水素酵素異常症の構造基盤
Structural basis for glucose-6-phosphate dehydrogenase deficiency
堀越 直樹
1
Naoki HORIKOSHI
1
1東京大学定量生命科学研究所
キーワード:
G6PD異常症
,
NADPH
,
溶血性貧血
,
構造解析
Keyword:
G6PD異常症
,
NADPH
,
溶血性貧血
,
構造解析
pp.539-544
発行日 2021年8月7日
Published Date 2021/8/7
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27806539
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グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)はNADP+/NADPHのレドックス制御を介した細胞内の酸化ストレス調節に重要なタンパク質である.ミトコンドリアなどの細胞小器官を有さない赤血球においては,G6PDがNADPH産生の主要な酵素となるため,G6PDの活性低下は赤血球の崩壊に伴う溶血性貧血の原因となる.興味深いことに,世界でおよそ4億人がG6PD遺伝子に変異を有すると推定されており,変異によってはG6PDの活性が野生型の10%以下まで低下することが報告されている.世界保健機関(WHO)によるクラス分類において最も重篤なクラス1変異を有するG6PD異常症患者は,G6PDの活性低下に加えて慢性非球状溶血性貧血(CNSHA)の症状を呈する.G6PD異常症に対する効果的な治療法はいまだ確立されていないが,G6PD異常症の原因となるG6PD変異体に対する薬剤スクリーニングや立体構造解析から,今後のG6PD異常症に対する創薬化学研究が期待されている.
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