はじめに

　2020年，COVID-19の感染拡大を受け，私たちは新しい生活様式への移行を余儀なくされた．公共交通機関を利用する際にはなるべく混雑時を避け，近所のコンビニへの買い物や職場内でも常に個人での感染防止対策をしている．社会的・環境的な条件によって外出や仕事に制限がかかるこうした状況ははじめて体験するものではあったが，同時に私は子どもを出産した後に同じ感覚を抱いていたことを思い出した．乳幼児を連れての外出では，これまで自由に利用していた交通機関や飲食店を使う際に，さまざまな配慮や準備が必要となった．当時はベビーカーをたたまずにバスに乗車することもできなかったし，完全禁煙の飲食店を探すことも容易ではなかった．私たちはCOVID-19のパンデミックによりさまざまな困難を経験することとなったが，一方で，これまで遅々として進まなかったテレワークやオンライン会議が当たり前のように行われるようになり，外出や移動に社会的な制限がかかっていた多くの人たちにとってはよい変革も起こったように思う．