連載 この病気,何でしょう? 知っておくべき感染症・Vol.5
シャーガス病
-――国内の現状と課題
今井 一男
1
,
前田 卓哉
2
Kazuo IMAI
1
,
Takuya MAEDA
2
1埼玉医科大学医学部感染症科・感染制御科
2同臨床検査医学
キーワード:
シャーガス病
,
合併症
,
検査
,
先天感染
Keyword:
シャーガス病
,
合併症
,
検査
,
先天感染
pp.303-307
発行日 2021年4月24日
Published Date 2021/4/24
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27704303
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Summary
シャーガス病は,クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi:T. cruzi)原虫の感染により引き起こされる昆虫媒介性の慢性感染症であり,主に原虫を媒介するサシガメとよばれる吸血昆虫の生息域である中南米で流行する疾患である.サシガメがヒトを吸血する際に排出する糞便内に感染性のあるT. cruziが含まれており,糞便がサシガメの吸血痕に擦り込まれることで感染が成立する.T. cruziは初感染後,数十年にわたり持続的に体内に寄生し,心合併症や腸管合併症などさまざまな合併症を引き起こす.近年,中南米移民の増加に伴いグローバルな公衆衛生上の問題として注目されている.日本にも約3,000人のシャーガス病患者が存在すると推察されており1),母子感染・輸血感染・移植感染による,非昆虫媒介性の感染拡大に注意が必要である.本稿では,シャーガス病の自験例をもとに,国内におけるシャーガス病の現状と診断の留意点について概説したい.
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