1細胞メタボローム解析の現状

Current status of single-cell metabolome analysis

　代謝物総体（メタボローム）に基づくオーム科学であるメタボロミクスは，代謝物の定量情報を網羅的に取得することで生命システムにおける新たな代謝制御の発見につながるだけでなく，ゲノム情報に隣接した高解像度の表現型解析手段としても活用できる．したがって，その他のオミクス解析と同様に，1細胞レベルでのメタボローム解析の実現に対する期待感と関心が日増しに高まっている．一方，メタボローム分析はPCRのような観測対象物の増幅操作ができないため，細胞内に存在する膨大な種類の分子種を識別しながらそのまま検出する必要がある．そのため，1細胞中のメタボローム情報を取得するためには，分析システムのさらなる高感度化および周辺技術の発展が必要不可欠である．本稿では，筆者らがこれまで開発してきたナノ液体クロマトグラフィタンデム質量分析（nano-LC/MS/MS）を基盤とした1細胞メタボローム分析法の現状ついて解説する．