最新基礎科学/知っておきたい
メタボローム解析―唾液から癌の診断
杉本 昌弘
1
1慶應義塾大学先端生命科学研究所
pp.214-218
発行日 2011年3月25日
Published Date 2011/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101925
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■メタボロームとは?
ポストゲノム時代,様々なオミックス技術を組み合わせて生体内の構成要素の情報を集め,その要素間の相互作用から,生体内で起きている現象を包括的に解明しようとするシステムバイオロジーが盛んに行われるようになってきた.このようなアプローチは,大量の情報をハイパフォーマンスなコンピュータを用いて処理するバイオインフォマティクス技術と,細胞内の様々な分子群を網羅的に測定する技術との融合により,実現化されてきた.このような測定技術には,ゲノミクスに加え,遺伝子の発現状況やRNA分子全体の挙動を把握するトランスクリプトーム,タンパク質を網羅的に測定するプロテオームなどがある.さらに,近年の質量分析装置を中心とした高感度な測定技術の発展により,タンパク質を構成するアミノ酸のような低分子の網羅的測定も可能となってきた.厳密にどの範囲という定義はないが,1,000Da以下程度のこのような低分子である代謝物(メタボライト)の総称をメタボロームと呼ぶ.本項では,これらを網羅的に測定して解析するメタボローム測定技術の紹介と,本技術を唾液診断に応用した研究例を紹介する.
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