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特集 難聴の治療――再生医療から人工聴覚器まで
IGF-1による急性感音難聴の治療
Treatment of acute sensorineural hearing loss with insulin-like growth factor 1
山本 典生
1
Norio YAMAMOTO
1
1京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科
キーワード:
成長因子
,
有毛細胞
,
支持細胞
,
臨床試験
,
人工内耳
Keyword:
成長因子
,
有毛細胞
,
支持細胞
,
臨床試験
,
人工内耳
pp.689-694
発行日 2021年2月13日
Published Date 2021/2/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27607689
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感音難聴は,生後哺乳類で内耳や神経の再生が期待できず,根本的治療法がないため,再生医療の概念を応用した治療法の開発が期待される.成長因子であるインスリン様成長因子1(IGF-1)を用いた急性感音難聴の治療は,齧歯類を用いた研究で,さまざまな種類の内耳障害に効果を示したため,急性感音難聴の代表的疾患である突発性難聴に対して臨床試験が行われた.副腎皮質ホルモン剤全身投与不応例に対して,IGF-1の徐放性局所投与を行ったところ,高気圧酸素療法のヒストリカルコントロールと比較して聴力回復の割合が高く,また多施設ランダム化比較試験では,聴力回復の経過は対照となる副腎皮質ホルモン剤鼓室内投与例よりも有意に良好であった.その後,IGF-1は有毛細胞周囲の支持細胞に働き,支持細胞から分泌されるNetrin1がエフェクターのひとつであることが確認された.人工内耳手術の際の聴力温存にも効果があることが動物実験で示され,今後の応用が期待される.
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