案件から学ぶ医療事故の対策と問題点
褥瘡治療の不備による死亡例
向井 秀樹
1
1東邦大学医療センター大橋病院
pp.278-279
発行日 2023年3月1日
Published Date 2023/3/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000003347
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・70歳代女性.老人ホームに入所中.脳梗塞と認知症のため寝たきり状態.数カ月前より臀部の仙骨部や大転子部などに表皮剝離と発赤局面が出現.エアーマット使用を開始.抗菌薬のゲンタシン®軟膏や白色ワセリン外用,さらにラップ療法を行うも効果なく,仙骨部の中央に2cm大の黒色調で固着性の壊死を認める.
・褥瘡を考え,大転子部の発赤部にはデュオアクティブ®を貼付するも,滲出傾向が強く潰瘍を形成している.
・皮膚科医に往診を依頼.カルテには褥瘡との診断名と,外用薬をすべてユーパスタコーワ軟膏に変更と記載されている.局所の消毒や清潔を保つように看護師に口頭で指示している.
・1~2週ごとに往診を行い,臨床像をみながら潰瘍部にはプロスタンディン®軟膏,発赤部にはサトウザルベ軟膏やユーパスタコーワ軟膏の外用を指示.カルテには,病像や治療方針などはまったく記載されていない.
・往診6週後より,38℃台の発熱を繰り返し,褥瘡部からときどき膿汁が排出する.加えて,呼吸器症状も出現するようになり,細菌感染症や心不全を考えて,上級施設救急外来を受診し入院となる.
・入院後の褥瘡は,4cm大の潰瘍と固着性の黒色壊死が残存し,7cm大の深いポケット状を形成している.潰瘍部や血液からの細菌培養で,大腸菌やレンサ球菌など複数陽性.抗菌薬を変更するも,敗血症性ショックと心不全にて永眠される.
(「経過」より)
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