案件から学ぶ医療事故の対策と問題点
頭部白癬の誤診や治療不備による瘢痕性脱毛
向井 秀樹
1
1東邦大学医療センター大橋病院皮膚科
pp.262-263
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000004112
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・小学生,女児.胸部に鱗屑を付す環状紅斑と頭部の紅斑を主訴に来院する.
・真菌検査を施行.胸部に菌要素を認め,体部白癬として抗真菌外用薬で治療を開始する.頭部は陰性であり,脂漏性皮膚炎を疑いステロイドローションを処方する.
・初診3週後に頭部症状が改善せず再診.胸部の皮疹は色素沈着を残し改善するも,頭部の皮疹は悪化し,鱗屑を付す紅斑と易脱毛性,一部に脱毛斑を認める.今回の真菌検査は陽性となり,抗真菌外用薬と副作用回避のため少量のイトラコナゾール(Itra)内服を併用する.
・抗真菌薬の外用治療とItra内服に反応せず,頭部の痛みや炎症が強く一部化膿しており,抗菌薬の内服を併用するも効果に乏しく,上級施設に紹介する.
・紹介先の問診でレスリングをしていることが判明し,真菌培養の結果からもTrichophyton tonsuransによるケルスス禿瘡と診断される.テルビナフィン常与量で改善する.
・数cmの瘢痕と脱毛局面が数個残存するも,発毛は順調で瘢痕局面は縮小している.
(「経過」より)
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