案件から学ぶ医療事故の対策と問題点
左後頭部脂肪腫摘出術により大後頭神経損傷を生じた例
向井 秀樹
1
1東邦大学医学部
pp.174-175
発行日 2021年2月1日
Published Date 2021/2/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000002416
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・60歳台女性.数年前から左後頭部に触れると軟らかい皮下腫瘤に気づく.自覚症状はなく放置していたところ漸次増大する.最近,睡眠時に腫瘍が邪魔で左向きには寝づらくなったため,切除目的に紹介受診.
・直径4cm大の弾性軟の性状から脂肪腫と診断し,切除手術をすることに.手術承諾書を取り術前検査を施行.
・キシロカイン®E入り局麻剤で手術を開始.左後頭部の皺に沿って水平方向に切開する.腫瘍は厚い線維成分におおわれている.そこで,ぺアンによる鈍的剝離と,残存する索状物や線維成分は剪刃での切断を繰り返す.
・腫瘍下面を被膜に沿って剝離する際に,急激な動脈性出血を認める.圧迫での出血を制御できず,バイポーラで止血を行う.血腫予防にドレーンを挿入し,抗菌薬と鎮痛剤を処方.
・翌日消毒に来院.血腫なくドレーンを抜去.術後5日目,後頭部のしびれを訴える.
・術後2週目に抜糸.しびれやジリジリとした痛みは残存.しびれは,電気凝固による神経損傷と説明.メチコバール®内服を処方.
・術後6カ月後,左後頭神経領域の感覚障害は持続している.
(「経過」より)
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