案件から学ぶ医療事故の対策と問題点
シクロスポリン長期服用による慢性腎不全を生じた例
向井 秀樹
1
1東邦大学医学部
pp.260-261
発行日 2020年3月1日
Published Date 2020/3/1
DOI https://doi.org/10.24733/pd.0000001978
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・幼小児期発症の30歳代のアトピー性皮膚炎男性患者.
・種々の治療を行い改善と増悪を繰り返してきた.入院歴もあるが,ステロイド忌避傾向が強く,最近5年間は無治療で,紅皮症状態となり受診.再度高次医療機関での入院を勧めるも拒否.
・シクロスポリン200mg/日(4.4mg/kg/日)の内服を開始.体幹にはアンテベート軟膏とヒルドイドソフト軟膏の混合剤.シクロスポリンの副作用を話すと投薬を拒否されると考え詳細な説明はせず.シクロスポリン血中濃度,血圧測定や肝・腎機能の検査も未実施.
・シクロスポリン200mg/日に,悪化時はステロイド内服や注射を施行する.効果が下がり300mg/日まで増量した.精神状態が不安定で引きこもり状態になり,外来は薬のみの処方が主体になり数年が経過した.受診時のみ数回採血するも血清クレアチン値は正常値を示した.100mg/日に減量後の採血は行っていない.
・近医内科医が高血圧や高脂血症の治療を担当し,血液検査で血清クレアチン値が3.68mg/dLと高値のため高次医療機関腎臓内科を紹介.高血圧や腎不全を指摘され入院加療となり,シクロスポリンの内服は中止した.
(「経過」より)
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