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はじめに
卵黄囊腫瘍(yolk sac tumor:YST)は女性の性腺外胚細胞腫瘍のなかで最も多い組織型の一つで1),特に膣原発はほぼ全例が2歳以下の小児に発症するといわれている2)。乳幼児期の膣原発悪性腫瘍の主な鑑別としては他に横紋筋肉腫があげられるが,YSTは血清中のαフェトプロテイン (AFP)が高値となることが知られており,鑑別は容易である3)。乳幼児期発症の悪性胚細胞腫瘍は,最も予後不良なStage Ⅳ性腺外胚細胞腫瘍でも80%の長期生存が得られる4)など治療成績は良好で,膣原発横紋筋肉腫もぶどう肉腫(botryoid tumor)と呼ばれる予後良好のものが多い5)。これらに対する治療戦略として過去には拡大手術などを行う時期もあったが,近年では化学療法を中心とした治療戦略で予後が著明に改善してきたことによって6),治療の副作用や合併症の軽減・回避が新たな重要課題としてあげられるようになった。頭蓋外小児胚細胞腫瘍のなかで,特にYSTのような非セミノーマ型腫瘍では通常放射線療法に抵抗性であり,化学療法前後での完全切除による外科的局所コントロールが重要とされているが7),膣原発YSTは化学療法のみで治癒するとの報告が増えてきている6)。横紋筋肉腫においても,化学放射線療法への感受性が非常に高いため,原則として臓器温存とR0切除手術が両立できる場合に限り切除を行うとされる8)。一方で,このような非手術療法が奏効せず,外科的に腫瘍を切除する必要がある症例がなくなったわけではない。元来まれな原発部位である膣の腫瘍手術を経験することが非常に少なくなってきているなかで,根治性と機能温存の両立が求められており,個々の症例でさまざまな検討や工夫が必要となる。
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