特集 胎児治療の進歩と今後の展望
胎児治療の歴史
吉澤 穣治
1
,
中神 智和
1
,
川野 晋也
1
,
渡井 有
2
Jyoji Yoshizawa
1
,
Tomokazu Nakagami
1
,
Shinya Kawano
1
,
Yu Watarai
2
1昭和大学江東豊洲病院小児外科
2昭和大学小児外科
pp.4-8
発行日 2023年1月25日
Published Date 2023/1/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000321
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はじめに
胎児を治療することで胎児死亡や出生直後の死亡,重篤な障害を回避することを目標に,先人たちはさまざまな工夫を積み重ねてきた。胎児治療の歴史は,1963年にLiley1)が母児間血液型不適合による胎児水腫に対してX線透視下に胎児腹腔内輸血を行ったことに始まる。そして,その発展には正確な診断技術の進歩や新たな治療器具の開発が背景にあった。さらに1981年Feletcher2)によって “The fetus as patient”(胎児の権利)という倫理感が提唱され,世界各国で普及,定着したことも背景にある。正確な胎児診断・治療のために欠かせない超音波診断装置やMRIの進歩は,形態的異常の早期発見や治療にも大きく貢献している。また,1990年ごろに急速な発展を遂げた鏡視下手術手技や周辺機器の開発が,胎児を外科患者として考えること(the fetus as surgical patient)ができるまでに胎児治療手技の進歩を後押しした。
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