特集 小児外科を取り巻く最新テクノロジー
線虫C. elegansを用いた小児がんスクリーニング
新開 統子
1
,
杉本 敏美
2
,
増本 幸二
1
,
広津 崇亮
2
Toko Shinkai
1
,
Toshimi Sugimoto
2
,
Kouji Masumoto
1
,
Takaaki Hirotsu
2
1筑波大学医学医療系小児外科
2株式会社HIROTSUバイオサイエンス
pp.1032-1035
発行日 2022年10月25日
Published Date 2022/10/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000259
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はじめに
神経芽腫に代表される小児の固形悪性腫瘍は,発見時にすでに遠隔転移をもつ進行がんである場合が多く,早期発見・早期治療は予後改善のための重要な因子であると考えられる。神経芽腫マススクリーニング事業の経験から,小児固形悪性腫瘍の早期発見には課題が多く,すべての乳幼児を対象とした,いわゆるがん検診はいまだ現実的ではない。しかし,小児領域には,将来固形悪性腫瘍を発生する可能性の高い症候群や家系が存在し,とりわけ肝芽腫や腎芽腫などの腫瘍がその代表として知られている。この特定の症候群や家系においてがんを早期発見するために,現在では定期的な超音波検査を行っているが,必ずしも早期発見に至らないことがある。このような症例に対して,小児においては定期的な超音波検査や血液検査を補完できる,侵襲性の低い検査の組み合わせが求められる。そこで,成人がんの領域で開発された,線虫Caenorhabditis elegansを用いた尿検体によるがん検査に着目した。線虫C. elegansには鋭敏な嗅覚が備わっており(図1),成人領域では胃がん・大腸がんなど15種類のがん患者の尿の匂い成分に感度95.8%・特異度95.0%で誘引行動を示すとされる1)。逆に健常者の尿では忌避行動がみられる。この技術を小児固形悪性腫瘍に応用して,小児がんスクリーニングの可能性を検討した。
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