Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
線虫C. elagansの神経系
線虫C. elegansは1960年代にSydney Brenner博士によって,発生の仕組みと神経系機能の解明に適するモデル生物として選ばれた1)。発生に関しては,2002年に「器官発生とプログラム細胞死の遺伝制御」の研究で,John Sulston,Robert Horvitz両博士と共にノーベル生理医学賞を受賞している。神経系については,Brenner博士が1960年代当初からシステムバイオロジー的な研究戦略を持っていたことはあまり知られていない。神経の配線すべてを明らかにしてneural computationを解読し,究極的にはコンピューターシュミレーションによって行動を再現する構想を描いていた。自伝「My Life in Science」に書かれているように,ある時期コンピューターに没頭したことが,この着想に大きな影響を与えたのである。偶然か必然か,おおむね彼の構想に従ってサイエンスが動いており,その先見性は驚愕と言うしかない。
線虫は302個の神経細胞からなり,Whiteらによる電子顕微鏡解析から約5,000個のシナプス,約600個のギャップジャンクションからなる全神経接続が明らかにされている2)。哺乳類の神経系で使われている主要な神経伝達物質,グルタミン酸,アセチルコリン,GABA,モノアミン類などが線虫に存在している3-7)。イオンチャネルも,哺乳類のイオンチャネルのホモログが多数存在するが,ゲノム上に電位依存型Na+チャネルの遺伝子は存在せず,線虫では活動電位は生じないと考えられている3)。とは言え,神経回路での速い電気的伝播は可能であり,Ca2+電流が重要な役割を果たしていると考えられる8)。一般に神経細胞内にイオンが流入した後に種々のプロテインキナーゼが活性化されるが,CAMKII,CAMKIV,PKA,PKC,PKG,MAPKなど,哺乳類のプロテインキナーゼのホモログが線虫に多数存在している。
Copyright © 2013, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.