特集 短腸症候群の診療における問題点
第118回東京小児外科研究会より
質量分析を用いてD-乳酸アシドーシスと診断した短腸症候群の1症例
安藤 晋介
1
,
渡井 有
2
,
中山 智理
2
,
大澤 俊亮
2
,
田山 愛
2
,
杉山 彰英
1
Shinsuke Ando
1
,
Yu Watarai
2
,
Noriyoshi Nakayama
2
,
Shunsuke Osawa
2
,
Ai Tayama
2
,
Akihide Sugiyama
1
1昭和大学横浜市北部病院こどもセンター小児外科
2昭和大学病院小児外科
pp.222-226
発行日 2022年3月25日
Published Date 2022/3/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000063
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はじめに
D-乳酸アシドーシスとは腸管大量切除後や空・回腸バイパスの患者で生じるまれな病態で,繰り返す意識障害と代謝性アシドーシスを生じる1)。経口摂取した炭水化物が,小腸での消化・分解が不十分なまま結腸に多量に流入することにより腸内細菌叢が変化し,D-乳酸を産生する乳酸菌属が増殖することが原因とされている2)。また小腸の短縮により腸液が減少し,胃液によって引き起こされる低pH状態がD-乳酸産生菌にとって最適な環境を提供しているとも考えられている3)。D-乳酸は腸管から容易に吸収されるもヒトの体内では代謝できないため,直接尿中へ排泄される。D-乳酸の発生と排泄のバランスが崩れることにより,体内にD-乳酸が蓄積され代謝性アシドーシスを生じるとされる4)。血液ガス分析ではL-乳酸のみの測定となるため,乳酸値が正常でアニオンギャップが高値の代謝性アシドーシスを認める場合に本症を疑う5)。
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