特集 止まらない血液・固まりすぎる血液,さてどうする?
各論 疾患や治療に伴う小児の血栓・止血疾患
急性リンパ性白血病と血栓症―L-アスパラギナーゼでなぜ血栓症が起こるのか?
石原 卓
1
Takashi Ishihara
1
1奈良県立医科大学小児科
pp.706-710
発行日 2026年5月1日
Published Date 2026/5/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002993
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はじめに
急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)のキードラッグの一つであるL-アスパラギナーゼ(L-asparaginase:L-ASP)は細胞内アスパラギンを分解・枯渇させることで,アスパラギン合成酵素を欠き自力ではアスパラギンを産生できないALL細胞のみを選択的に死滅させる,きわめて理想的な薬剤である。その一方で,膵炎やアナフィラキシー・アレルギー症状に加え,凝固関連パラメータの変動や血栓症リスクの上昇といった非常に厄介な有害事象も知られている1)。これらのために支持療法として何をやるべきか臨床現場で悩む場面も少なくない。とくに血栓症を一度発症すると,意識障害や四肢麻痺などの後遺症を残し得るだけでなく,ALL治療の中断を余儀なくされ,再発リスクの上昇や患者のQOL低下にも直結し得る。にもかかわらず,病態を正確に評価して合併症を未然に防ぐことは,現時点では容易ではない。支持療法として従来施行されてきた新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP)やアンチトロンビン(antithrombin:AT)製剤の補充についても,その適応や有効性に関する明確な結論は依然として得られていない2)。

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