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はじめに
L-asparaginaseは血中のアスパラギンに作用し,アスパラギン酸を産生する酵素で,小児の急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia;ALL)や悪性リンパ腫(malignant lymphoma;ML)の治療薬として広く用いられている1).アスパラギンは必須アミノ酸ではないので,L-asparaginaseの作用で血中の濃度が低下しても,正常細胞は蛋白合成や機能発現に必要なアスパラギンを,代償的にアスパラギン酸あるいはグルタミンからアスパラギン合成酵素の触媒によりある程度産生できる.これに対して,悪性リンパ系細胞はアスパラギン合成酵素の活性が著しく低く,代償的なアスパラギンの産生能が低下しているため,細胞の維持に必要なアスパラギンを血中プールに頼らざるを得ない.これが,L-asparaginaseがALLやMLの治療薬として作用するメカニズムである.
L-asparaginaseの副作用として注意が必要なものとして,肝を中心とした蛋白合成の低下およびアスパラギンの脱アミノに由来する血中アンモニアの上昇がある2).L-asparaginase治療においてはこれらをモニターし,治療効果と副作用のバランスに最善の注意を払う必要がある.これに加えて,もう1つ問題になるのが副作用として誘発されることがあるType IV型あるいはType V型の高リポ蛋白血症である3).これらの高リポ蛋白血症は急性膵炎を引き起こし,患者が重篤な状態に陥る危険性があるため,血清脂質〔主にトリグリセライド(triglyceride;TG)〕をモニターし,早期に適切な対処をすることが望まれる.L-asparaginaseが高TG血症を誘発するメカニズムの詳細は必ずしも明確でないが,一般的にL-asparaginaseと併用されるvincristine,methotrexate,prednisoloneなどの薬剤によって高度な高TG血症が誘発されることはなく,L-asparaginaseの関与が大きいと考えられている.
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