特集 止まらない血液・固まりすぎる血液,さてどうする?
総論
生理的な血栓・凝固の役割とその破綻による病態形成
坂田 飛鳥
1
,
松本 雅則
1,2
Asuka Sakata
1
,
Masanori Matsumoto
1,2
1奈良県立医科大学輸血部
2奈良県立医科大学血液内科学
pp.597-602
発行日 2026年5月1日
Published Date 2026/5/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002972
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はじめに
血栓形成の本来は個体を失血や感染から守る生体防御機構である。カブトガニにも類似の機構が確認されており,カブトガニの血液に相当する血リンパを流れる唯一の細胞であるアメーバ様細胞(アメボサイト)は,リポポリサッカライド(lipopolysaccharide:LPS)やβ-D-グルカンに反応してセリンプロテアーゼを放出し,コアギュローゲンをコアギュリンに変換して血リンパをゲル化(凝固)させる。この仕組みで,カブトガニは体液の漏出や感染に対抗していると考えられる。ヒトの血栓形成では形成を促進する方向に働く因子[血小板活性化や外因系/内因系凝固反応,フォンビルブランド因子(von Willebrand factor:VWF),補体活性化を含めた炎症反応など]と形成に対して抑制的に働く因子(抗凝固反応や線溶反応など),さらに血流,血管収縮などそれらを修飾する因子がかかわり,これらがバランスをとって血液の流動性を保ちつつ,必要に応じて必要な場所で血液を固まらせるという制御が行われている(表)。生理的な血栓形成の仕組みを理解することは疾患の表現型理解,またどのような治療が必要となり,治療介入によってどのような変化が起こりうるかを理解することにつながり,この領域を学習するに利するところが大きいと考えられる。

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