特集 常在微生物叢と小児疾患~腸内細菌叢の先にあるもの~
総論
【コラム】抗菌薬と腸内細菌叢
堀越 裕歩
1
HORIKOSHI Yuho
1
1東京都立小児総合医療センター総合診療部感染症科,免疫科,小児感染症センター
pp.1034-1034
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002512
- 有料閲覧
- 文献概要
小児の腸内細菌叢が抗菌薬の影響を受ける時期としては,胎児期,新生児期,乳幼児期,学童期以降といった各段階が考えられている。従来,胎児は無菌環境の子宮内で育つとされてきたが,近年では羊水,胎便,胎盤から細菌のDNAが検出されることから,胎児期から母体の腸内細菌叢の影響を受けている可能性が指摘されている。ただし,子宮内が無菌ではない説は,明確な結論にはいたっていない。また,妊娠中に母親が抗菌薬を使用した場合,出生児に小児喘息やアレルギー性鼻炎や結膜炎などの発症が多かったとする疫学調査もある。抗菌薬の服用が直接の原因であるかは不明だが,出生後の抗菌薬使用でも同様にアレルギー疾患との関連が報告されており,抗菌薬による母体または胎児の細菌叢への影響が,免疫の発達や疾患感受性に関与している可能性がある。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.