特集 常在微生物叢と小児疾患~腸内細菌叢の先にあるもの~
序―ヒトの常在微生物叢と健康
下条 直樹
1
SHIMOJO Naoki
1
1千葉大学医学部附属病院アレルギーセンター
pp.985-986
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002502
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人間の腸内には,細菌,古細菌,ウイルス,原生生物(原生動物や真菌など)を含む数兆個の微生物が存在する。これらの高度に多様な微生物群集,すなわち腸内微生物叢[ガットマイクロバイオータ(gut microbiota)]は,数千年にわたって宿主である人間と共進化を遂げてきた。腸内微生物叢と宿主の相互作用に基づく生態系は「腸内エコシステム」とよばれている。マイクロバイオータは微生物集団の全体を指す用語であり,微生物集団が有する遺伝情報全体はマイクロバイオーム(microbiome)とよばれる。近年は真菌[マイコバイオーム(mycobiome)]やウイルス[バイローム(virome)]についても解析が進んでいるが,腸内微生物叢の研究対象としては細菌が従来から中心であり,現在まで多くの知見が得られている。腸内細菌叢は地域,人種,民族によって異なっているが,生活様式と食習慣がその形成に大きな影響を有すると考えられている1)。
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