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術前術後の管理が外科医にとって重要であることは言うまでもありません.外科医は手術だけやっていればよいわけではないんだ,自分の手術の術後には責任を持つんだ等,誰もが先輩医師に耳にタコができるくらい聞かされた(あるいは聞かされている)ことと思います.というわけで,若いころに徹底的に叩き込まれた……ようでいて,実は細かいところまでわかりやすく教えてくれる先輩はおらず,麻酔学の成書で勉強したりもしました.もちろん,網羅的に勉強するのは時間的に不可能に近く,知りたいことがあったときにちょこちょこと調べる程度でした.その後,周術期管理は雑誌の特集号などで取り上げられがちなテーマであることを知り,当時出版されたものを勇んで購入した記憶もあります.しかし,私たちの世代の医師たちにとって,こうして身につけた管理法の多くが現在では時代遅れであったり,かえって行ってはいけないことであったりします.
近年,手術手技は大きな発展を遂げましたが,周術期管理の進歩もまさに同様であり,ある項目は手術手技の進化と連動し,ある項目はこれとはまた別に独自に進化し,場合によりかつては周術期管理などと縁のなかったメディカルスタッフの協力も得て,手術後の短期成績を表す様々な指標の向上に寄与しております.例えば自動吻合器,縫合器の開発に伴う吻合の安全性の向上により,かつては1週間の局所の安静,減圧のうえで胃透視を行ってから経口摂取を許可するほど慎重に扱っていた食道空腸吻合部も,今や普通の消化管吻合部にすぎません.内視鏡外科手術の普及に伴う低侵襲性や消化管運動の早期の回復により,腹部手術の翌日には普通に歩いたり経口摂取を開始したりもします.周術期の徹底したリハビリは特に高侵襲な手術の術後の立ち上がりを大きく後押ししています.
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