特集 入門! アタッチメントと小児期逆境体験を知る
アタッチメント障害・小児期逆境体験・トラウマ関連障害への対応~基本をおさえる
周産期における親子支援―アタッチメント形成を阻害する要因と予防的支援
永田 雅子
1
NAGATA Masako
1
1名古屋大学心の発達支援研究実践センター
pp.895-898
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002473
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はじめに
親と子の関係はいつから始まっているのだろうか。子どもを妊娠,あるいは出産したからといってすぐに親になるわけではなく,そこに子どもがいるということに助けられて進んでいくプロセスである。親は,胎児や乳児に対して強いきずなの感情(ボンディング)を抱き,子どもの反応に引き出されることで養育行動を行っていくとされている。また子どもは親のかかわりによってその反応を引き出されていく。そこでは,生き生きとした親と子の間でのコミュニケーションが展開され,お互いに調整をしながら,やり取りが積み重ねられていく。子どもは,自分のサインに適切に,応答的に対応してくれる他者との関係のなかで,自分が不快な状態から落ち着きを取り戻していく体験をくり返し,こうした安心感を基盤にした関係から形成されるのがアタッチメントである。子どもは,生後半年をかけてアタッチメント対象を選定し,その特定の他者との間で安心感を伴う,安定した質のアタッチメントを育んでいく。養育者となることの多い親が,敏感で適切で情緒的に調整されたかかわりをすることが,子どもが安定したアタッチメントを発達させる支えとなっていく。

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