特集 アタッチメントの形成
アタッチメントをめぐって
古澤 頼雄
1
,
竹内 伸宜
1
1神戸大学大学院文化学研究科
pp.354-360
発行日 1989年5月25日
Published Date 1989/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207610
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アタッチメントとは
われわれ人間は,常にほかの人との関係の中で自分の生活を維持するとともに,その関係を充実させ,拡大していきます。いくら人間関係が疎遠になったからといって,まったくひとりで生きていくということは不可能です。人間が人間と情緒的に結びつく要求をもつというのは,このような存在の本質からして疑問の余地のないものと考えられます。
生まれたばかりの乳児は,自分という概念をもっていないでしょうし,他者という概念も同じようにまったくもっていないでしょう。それでも,泣き声,身体運動,表情でもって周りの他者がかかわりをもたざるを得ないような状況をつくり出していきます。生後数か月経てば,特定の他者(養育者)に対して,選択的に微笑むなど,その結びつきの対象選択がよりはっきりしてきます。結びつきの意図や,それを表現する手段もしだいに明確になり,お互いのやり取りの中に,確固たる絆ができたことを感じさせるようになります。
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