特集 入門! アタッチメントと小児期逆境体験を知る
アタッチメント障害・小児期逆境体験・トラウマ関連障害への対応~少しだけアドバンス
アタッチメントを再構成する
遠藤 利彦
1
ENDO Toshihiko
1
1東京大学大学院教育学研究科
pp.949-952
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002486
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はじめに
発達心理学が,かつての児童心理学から,揺り籠から墓場までのトータルライフをターゲットとする生涯発達心理学へと変貌を遂げてすでに久しい。まさに生涯発達心理学とは,誕生あるいは今や受精から死にいたるまでの人の全発達過程の連続性と変化およびその背景に潜む機序を,精細につまびらかにすることを企図するものであるが,その暗黙の前提の一つに「人は生涯にわたってどの時点からでも自らの人生を変え得る」ということがある。そして,現にこれまで数多くの実証的知見が,その前提が揺るぎないものであることを支持してきている。幼少期にいかに不遇な環境下に置かれ,厳酷な逆境体験にさらされたとしても,そこから被る負の影響をはね返し,人生を徐々に好転させていった個の事例があまた存在することは言うを俟たない。しかし,その一方で,私たちはこの前提とともに「原理的に変わることはできても,現実的にその変化は年齢の上昇とともに次第に生じにくくなる」という厳然たる一つの科学的事実にも正当に目を向けておく必要があろう。

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