特集 アタッチメントの形成
アタッチメント形成のために望まれるケア
戸田 律子
1
1日本アクティブ・バースセンター
pp.381-385
発行日 1989年5月25日
Published Date 1989/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207614
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ボンディングからアタッチメントへ
「科学とは説明のできない周知のできごとを探究する学問なのだ」と言った人がいますが,なかなか味わいのある言葉です。ですから,科学者は愛情についてもそれがどのように芽ばえ,どのように対象者に向けられていくか,そしてどのように維持され,それが当事者にどのような影響をもたらすか,追究していきます。特に母子間,父子間のアタッチメソト形成については近年非常に関心がもたれ興味深い研究が現在もすすめられています。このことは研究が直接親子関係に反映するので,意義深いものがあります。
周産期における親子のアタッチメントの形成を探る科学は,特に1960年代以降,急速に発展しました。しかし,このような研究をすすめる先駆的学者ほど,出産を科学の枠にはめ込みすぎたために人間性が出産から失われていったことを憂えている点に注目すべきだと思います。特に周産期のボンディングが論議され,研究される過程で,研究の方法論を実際の医療施設の方針,またはマタニティ・ケアにそのまま取り入れることには,大きな誤りがあると思います。たとえば,ボンディングのために,産後10分間早期接触の機会を与えるなどの方法は,機会を与えないよりは良いという程度の臨床価値しかありません。
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