Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
1 検査の意義と適応
白血球のうち細胞質内に特異顆粒を伴い,核が2~5個(多くは3個)の小葉に分かれている細胞を,「顆粒球」ないしは「多形核白血球」とよぶ。多型核の顆粒球には好中球,好塩基球,好酸球があるが,単に顆粒球や多形核白血球という場合は,主に好中球が指すことが多い。好中球は,血液中の60%程度ともっとも多く存在する食細胞で,図に示す機序により生体防御を担当する。好中球は,局所の炎症性サイトカインや細菌・真菌の成分といった遊走刺激因子(走化性因子,chemotactic factor)に反応し,細胞表面にあるレセプターで刺激因子の濃い方を感知し,炎症・感染箇所へ集合する。到着後,血管内皮細胞上のセレクチン(selectin)分子と好中球表面上のシアリルルイス型糖鎖(sialyl Lewis carbohydrate)の結合により,血管内皮表面をローリング(rolling)する。その後,インテグリンなどの細胞接着分子(intercellular adhesion molecules:ICAMs)を介して血管上皮に強く接着する。接着した好中球は,血管上皮細胞の隙間をすり抜けて血管外の感染巣に遊走し,細菌・真菌へ接触する。その後,細菌・真菌などの異物を取り込み(貪食)し,NADPH酸化酵素の活性化を介した活性酸素の産生や,抗菌ペプチドの分泌などによる殺菌・分解を行うことで,生体を防御する働きを持つ。一連の工程を完遂した好中球は細胞死にいたり,炎症が終息する。この防御機構には,好中球自体の数もさることながら,前述した遊走能,接着,貪食能,殺菌能といった好中球の機能が重要である。これらの機能が障害され好中球が機能低下をきたすと,細菌・真菌による易感染性が出現する。先天的な好中球機能異常症の他に,白血病や糖尿病などに続発して好中球機能低下が起こるケースもある。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.