特集 小児科医が知っておくべき子どもの眠り
総論
子どもの眠りに関する問題,教育,治療総論 児童生徒に共通する睡眠問題とその支援策としての睡眠教育プログラム
田村 典久
1,2
TAMURA Norihisa
1,2
1広島大学大学院人間社会科学研究科
2広島大学脳・こころ・感性科学研究センター
pp.1185-1190
発行日 2024年8月1日
Published Date 2024/8/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001788
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はじめに
社会生活の多様化に伴う現代の24時間社会は,子どもの生活の夜型化を助長している。就床時刻の遅れとそれに伴う睡眠時間の短縮は,乳幼児期から思春期にかけて共通して認められているが,その傾向はとくに小学4年生以降の思春期の児童生徒に著しい。この背景には,年齢が上がるにつれて概日リズムの内因性周期が成人期に比して長くなることや,朝の光に対する概日系の感受性が低下し,夜の光に対する感受性が高くなること,睡眠欲求を表す睡眠圧の蓄積が学童期に比して遅くなることが関係する。さらに,同時期に生じる心理社会的・環境的要因の変化[たとえば,保護者による就床時刻の設定がなくなる,クラブ活動や塾,習い事への参加,寝室でのテレビ視聴,スマートフォン(スマホ)やゲームの利用など]も強く影響する。思春期では,こうした生物学的要因と心理社会的・環境的要因の影響を強く受けるため,就床時刻が遅れ,睡眠時間が短縮しやすい。これら睡眠の問題は児童生徒の学校での生活支障度を高めることから早期支援が求められている。
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