特集 小児科医が知っておくべき子どもの眠り
総論
子どもの眠りに関する問題,教育,治療総論 「眠れない」への薬物治療
兵頭 沙梨
1
,
細川 里瑛
2
,
堀内 史枝
3
HYODO Sari
1
,
HOSOKAWA Rie
2
,
HORIUCHI Fumie
3
1心療内科兵頭クリニック
2愛媛大学大学院医学系研究科精神神経科学
3愛媛大学大学院医学系研究科精神神経科学児童精神医学講座
pp.1219-1224
発行日 2024年8月1日
Published Date 2024/8/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001794
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はじめに
厚生労働省は,2024年2月に「健康づくりのための睡眠指針2014」を改訂し,「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を策定した。本ガイドにおいては,対象者別(成人,こども,高齢者)の睡眠・休養の推奨事項および睡眠・休養にかかわる参考情報についてまとめられている。こども版では,「小学生は9~12時間,中学・高校生は8~10時間を参考に睡眠時間を確保する」,「朝は太陽の光を浴びて,朝食をしっかり摂り,日中は運動をして,夜ふかしの習慣化を避ける」が推奨事項として掲げられた(図1)1)。わが国の忙しい子どもたちのなかで,推奨睡眠時間を満たしている子どもがどの程度いるであろうか。心身の休養と,脳および身体の成長のためには睡眠の確保が重要であることは自明の理であるが,なかなか難しい現状がある。また,睡眠習慣について子どもと養育者に尋ねた場合,両者の話が乖離することも少なくない。「眠れない」との訴えが,子ども発信なのか,養育者発信なのかで事情が異なる可能性がある。子ども本人からすれば,「眠れない」のではなく,「眠らない」のかもしれない。診断および治療開始前に,十分な情報収集・アセスメントを行うことが重要である。不眠症を含む睡眠障害が存在すると判断した場合,睡眠衛生教育の実施は必須である。睡眠衛生教育なしに,安易に薬物治療を行うべきではないことはいうまでもない。
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