特集 小児の事故と予防
事故の現状と予防対策
自転車関連事故―子どもの事故パターンと対策
岸部 峻
1
KISHIBE Shun
1
1東京都立小児総合医療センター救命救急科
pp.761-767
発行日 2024年5月1日
Published Date 2024/5/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001666
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はじめに
自転車は,1813年,ドイツのカール・フォン・ドライス(Karl von Drais)男爵が,前後に車輪のついた木馬(ベロシフェール)にハンドルを取り付け,走りながら曲がることができる足蹴り式の二輪車 “ドライジーネ” を発明したことに始まる。当時の記録として,“ドライジーネ” は37kmを2時間30分で走り,時速15km/時に相当したとされている。その後,ペダル式が開発され,さらに前ギアと後ギアをチェーンで結ぶ駆動方式,そして空気タイヤが装着されて現在の自転車の形に急速に進化していった。今や人々の生活には欠かせない移動手段の一つとなっており,わが国の2人に1人は自転車を保有していると報告されている。自転車の特性として,徒歩や人力・馬力車などよりも労力が少なく,自動車・タクシーやバス・電車・飛行機などと比べてアクセスしやすくコストを抑えることができる。なによりも,その機動性の高さから,都心部などの駐車場が少なく道が入り組んでいるエリアなど短中距離の移動で,自転車はその利便性を存分に発揮する。昨今ではスポーツタイプや電動アシスト付き自転車の出現により,自転車販売台数は増加傾向で,さらにコロナ禍で公共交通機関での移動が制限されるなかで自転車需要が高まり,過去最高の売上高を更新している。自転車利用ニーズが増加する一方で,なかなか減らないのが自転車に関連する事故である。死亡重傷事故件数に占める自転車関連の割合をみても,平成25(2013)年の22.6%に対して,令和4(2022)年で26.0%と報告されている1)。
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