特集 小児科医が知っておくべき筋疾患診療:遺伝学的理解と治療の最新事情
総論2:筋疾患の遺伝学的理解の進歩
遺伝性筋疾患の分子病態に基づく治療開発の進歩―遺伝子導入・アンチセンス核酸・低分子化合物など
竹島 泰弘
1
TAKESHIMA Yasuhiro
1
1兵庫医科大学小児科学
pp.1895-1900
発行日 2023年12月1日
Published Date 2023/12/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001422
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はじめに
遺伝性筋疾患の主なものとして,骨格筋細胞の壊死・再生を主病変とする筋ジストロフィー,構造異常による先天性ミオパチー,脊髄前角細胞の変性による脊髄性筋萎縮症,代謝酵素の欠損による代謝性ミオパチーなどが挙げられる。これらの疾患は,単一遺伝子変異により,その遺伝子産物である蛋白が欠損,あるいは発現低下することが原因であるため,その蛋白の産生を回復することが根本的な治療となる。ゲノム上の遺伝情報は,RNAに転写され,スプライシングなどの転写後修飾を受けてmRNAとなり,その情報に基づき翻訳され蛋白が産生される。したがって,蛋白の産生を回復するために,これらの各ステップを標的とした治療戦略が考えられる(図1左)。一方,原因蛋白欠損により生じた病態を改善する治療戦略(図1右)も重要であり,多くの疾患で開発が進められている1)。
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