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1 疾患概念
抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)は,1983年にHughesらによって提唱された後天性の自己免疫性血栓症であり,動脈血栓症,静脈血栓症,不育症などを引き起こす。診断には抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibody:aPL)とよばれる自己抗体の持続的な検出が必須である。基礎疾患のない原発性(primary APS:PAPS)と自己免疫疾患を基礎にもつ二次性とに分類され,二次性APSの基礎疾患でもっとも多いのは全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)である。aPLは「病原性自己抗体」に位置づけられ,主要な対応抗原は陰性荷電リン脂質と結合したβ2-グリコプロテイン(β2GPI)とプロトロンビンであることが明らかとなっている。aPLには,機能的手法である凝固検査で検出されるループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)と免疫学的手法である酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)によって検出される抗カルジオリピン抗体(anti-cardiolipin antibody:aCL),抗β2GPI抗体(anti-beta2 glycoprotein I antibody:aβ2GPI)がある。またわが国では,2020年7月よりaCL IgG/IgM,抗aβ2GPI IgG/IgMの化学発光免疫測定法(chemiluminescent immunoassay:CLIA)による4項目同時測定検査〔抗リン脂質抗体(APL)パネル〕が保険収載となっており,APLパネル(CLIA)は,ELISAによる検出アッセイと同等であると考えられている。aPLはSLEなどの膠原病や疾患感受性をもった個人が感染微生物に晒されることでも生じるため,12週以上あけて再確認する必要がある。複数のaPLが陽性(aCL,aβ2GPI,LAがすべて陽性であることをtriple positiveとよぶ)である場合や,aPLが持続的に陽性である場合は血栓症のリスクも高い。抗血小板・抗凝固療法が治療の中心であるが,二次予防を行っていても再発頻度がきわめて高いことが特徴である。aPLのプロファイルや,患者個々の血栓リスクを組み合わせて血栓症再発リスクを層別化して治療強度を選択する。
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