Japanese
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増刊号 小児疾患診療のための病態生理3―改訂第6版―
Ⅷ.境界領域疾患
10.中耳炎
Otitis media
仲野 敦子
1
NAKANO Atsuko
1
1千葉県こども病院耳鼻咽喉科
pp.1059-1064
発行日 2022年12月23日
Published Date 2022/12/23
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000701
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はじめに
中耳炎は中耳に炎症を認める疾患であるが,その病態から「急性中耳炎」,「滲出性中耳炎」,「慢性中耳炎」などに分けられる。「急性中耳炎」と「滲出性中耳炎」は,小児に多くみられる疾患である。いずれも上気道感染と関係していることが,小児で多くみられる要因の一つである。また,小児と成人の耳管の解剖学的相違も要因の一つである。耳管は鼓室と咽頭をつなぐ管である(図1)が,新生児~幼児では,耳管の鼻咽腔開口部の位置は低く,耳管軟骨の走行は頭蓋底平面に平行に近く,かつ短くて太い。成長とともに長くなり,角度も付く。図21)のように,成人の耳管の走行の角度は約45°であるが,乳児期は約10°である。また,耳管周囲の組織内には,多数の粘液腺が存在しているが,これは加齢に伴って減少していく1)。これら耳管の解剖学的相違も,小児では急性中耳炎や滲出性中耳炎に罹患しやすい一因である。「慢性中耳炎」は,鼓膜の穿孔が閉鎖せず中耳に慢性的に炎症が存在する状態であり,耳漏や伝音難聴がみられる疾患である。慢性中耳炎は,急性中耳炎による穿孔や,鼓膜切開や鼓膜換気チューブ留置術後の先行や外傷性鼓膜穿孔によるものもあるが,小児で問題となることは少ない。以下では,小児に高頻度でみられる急性中耳炎と滲出性中耳炎を中心に述べる。
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