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特集 漢方薬を使いこなす
《疾患・症候への処方の実際》
中耳炎
Otitis media
伊藤 真人
1
Makoto Ito
1
1自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児耳鼻咽喉科
pp.1074-1079
発行日 2015年12月20日
Published Date 2015/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200780
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POINT
●中耳炎には,急性中耳炎,滲出性中耳炎,慢性中耳炎があり,それぞれ異なる病態であることから,治療の考え方も異なる。
●急性中耳炎における漢方薬治療は,併用薬としての位置づけである。急性中耳炎の誘因である上気道炎をターゲットとして,初期には葛根湯または葛根湯加川芎辛夷が処方される。
●抗菌化学療法の限界ともいえる反復性中耳炎においては,抗菌薬治療を補完する治療として,十全大補湯などの補剤が有用である。合併する鼻副鼻腔炎の治療をターゲットとして,葛根湯加川芎辛夷や辛夷清肺湯,越婢加朮湯が用いられる場合もある。
●滲出性中耳炎に対する漢方薬治療では,病態を水毒と考えて利水作用のある処方を基本とする。鼓膜換気チューブ留置術というきわめて有効な治療法があることから,いたずらに漢方薬を含む保存的加療で病変を長引かせることは控えるべきである。
●小児滲出性中耳炎では繰り返す鼻副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎の関与がある場合には,慢性炎症の治療目的に柴胡剤が用いられることがある。鼻副鼻腔炎に対して,葛根湯加川芎辛夷や辛夷清肺湯,荊芥連翹湯が用いられ,アレルギー性鼻炎に対しては小青竜湯などが用いられる。
●慢性化膿性中耳炎の急性増悪期は抗菌薬治療の適応である。しかし,頻繁に繰り返す場合や抗菌薬では有効性が乏しいときには,葛根湯加川芎辛夷,十味敗毒湯,排膿散及湯が用いられる。
●慢性中耳炎に対する保存的加療の原則は,あくまで手術加療を前提とした消炎治療であり,特に真珠腫性中耳炎では手術治療が第一選択である。いったん炎症が治まり中耳,鼓膜の乾燥化が得られれば,速やかに手術治療にて根治をめざすべきである。
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