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1 基本病因,発症機序
福山型先天性筋ジストロフィー(Fukuyama congenital muscular dystrophy:FCMD)は,1960年にFukuyamaらが報告した神経細胞移動障害による脳奇形(皮質形成異常)と眼合併症を特徴とする重度の筋ジストロフィーである1, 2)。日本人に特異的に多い常染色体潜性(劣性)遺伝性疾患で,保因者数からの計算では,患者数は1,000~2,000人と推定されており,わが国における小児期発症筋ジストロフィーでは,Duchenne型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)に次いで2番目に多い。1990年代に9番染色体長腕上遺伝子座(9q31-33)同定に続き,原因遺伝子FKTNが報告された。創始者変異といわれるFKTNの3’非翻訳領域における3kbの挿入変異は,FCMD患者の87%にホモ接合型として認められ,FCMDではこの創始者変異のホモ接合,またはナンセンス変異やミスセンス変異,フレームシフト変異などほかの変異と創始者変異の複合ヘテロ接合型により発症する2)。創始者変異のホモ接合型では,臨床型は典型または軽症となるが,創始者変異と点変異の複合ヘテロ接合型では,重症型から軽症のさまざまな非典型例を生じる。発症率が10万人あたり2.9人であり,日本人90人に1人が保因者,または2005年の日本人を対象とした研究からは,188人に1人が保因者であると推察されている。日本に限局して報告されていたが,近年,日本人以外にもFKTN遺伝子変異が報告されるようになった。創始者変異である3kbの挿入変異は,動く遺伝子因子SVA(SINE-VNTR-Alu)型レトロトランスポゾンであり,FCMDは,SVAのエクソントラッピング機能により生じるスプライシング異常が原因で発症することが2011年に報告された3)。
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