Japanese
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増刊号 小児疾患診療のための病態生理3―改訂第6版―
Ⅲ.神経疾患
6.脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)
Cerebrospinal fluid hypovolemia (Intracranial hypotension)
篠永 正道
1
SHINONAGA Masamichi
1
1ふれあい平塚ホスピタル脳神経外科
pp.265-269
発行日 2022年12月23日
Published Date 2022/12/23
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000556
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1 基本病因,発症機序
脳脊髄液減少症をみたことのある小児科医はきわめてまれであると思われる。この疾患が小児科医の中に認知されていないからであろう。起立性調節障害,起立性頻脈症候群,片頭痛と診断されている症例の中に,一定数の脳脊髄液減少症が含まれていると考えられる。脳脊髄液減少症は,脳脊髄液がある閾値以下に減少することにより頭痛,めまい,吐き気,視覚障害,倦怠,記憶障害などの多彩な症状を呈する疾患である。原因の多くは脳脊髄液漏出である1)。高度の脱水により脳脊髄液産生が低下する例もある。脳脊髄液の漏出は,原因が特定できない特発性と,交通事故,スポーツ,転倒などの外傷に起因する外傷性がある。外傷性には検査や治療による腰椎穿刺も含まれる。小児では,体育授業(マット運動,とび箱,組体操,柔道など)やクラブ活動(バスケットボール,サッカーなど)による外傷が契機になる例が多い。脳脊髄液の減少,髄液圧の低下,脳脊髄液の循環障害のいずれが症状をひき起こすのかはよくわかっていない。特発性低髄液圧症候群の場合,頻度は年に人口10万人につき2~3人といわれているが,診断にいたらない例が多くあり頻度はもっと高いと思われる2)。外傷性は特発性より多い。小児例の頻度は不明であるが成人より多いのではないかと思われる。小児ではくも膜・硬膜形成が成熟しておらず,動きが活発で外傷の機会が成人に比べ多いからと推測される。成人では女性に多いが,小児例では男女差はみられない3, 4)。
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