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増刊号 小児疾患診療のための病態生理3―改訂第6版―
Ⅱ.先天代謝異常
6.非ケトーシス型高グリシン血症
nonketotic hyperglycinemia
呉 繁夫
1
KURE Shigeo
1
1宮城県立こども病院
pp.62-65
発行日 2022年12月23日
Published Date 2022/12/23
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000520
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1 基本病因,発症機序
非ケトーシス型高グリシン血症(nonketotic hyperglycinemia:NKH)は,生後数日以内に始まる意識障害やけいれんといった脳症様症状を呈するため,グリシン脳症(glycine encephalopathy)ともよばれる。NKHは,ヒトのグリシン代謝の主経路であるグリシン解裂酵素系(glycine cleavage system:GCS)の遺伝的欠損が原因であり,体液中のグリシン濃度の上昇が特徴的である。GCSは脳,肝,腎などのミトコンドリアに存在し,グリシンをCO2,アンモンニア,1炭素単位へと分解する。GCSは複合酵素であり,P, T, H, およびL蛋白質と略称される4つの構成酵素からなる。各蛋白質のアミノ酸残基数,遺伝子名,エクソン数,染色体位置を表に示す。P, T, H蛋白質はGCSに特異的であるが,L蛋白はピルビンサン脱水素酵素複合体などの構成蛋白質E3と共通である。L蛋白をコードするDLD遺伝子のノックアウト・マウスは胎生致死で,ヒトにおけるDLD欠損症は全て部分欠損であり,その臨床症状はLeigh脳症となり,高グリシン血症を呈さないことがわかっている1)。実際,L蛋白質欠損によるNKHの報告はない。H蛋白質欠損によるNKHの報告もきわめてまれである。
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