特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅰ.受容体に作用する薬物
1.イオノトロピック受容体
2)陰イオンチャネル内蔵型
グリシン受容体
赤木 宏行
1
Hiroyuki Akagi
1
1群馬大学医学部薬理学教室
pp.349-350
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901603
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グリシン作動性シナプス伝達は,GABA作動性シナプスとともに中枢神経系の抑制機構に深くかかわっている。GABAシナプスが中枢神経系に広く分布するのに対し,グリシンシナプスは脊髄,脳幹に局在分布するのが特徴である。このシナプス伝達が遮断されると,脊髄脳幹における脱抑制が起こり,その結果,反射性の運動機能の亢進,四肢の痙攣,呼吸麻痺などの諸症状が生じる。ストリキニーネによる薬物中毒や家族性疾患のひとつであるstartle diseaseがその一例である1)。
グリシン受容体(GlyR)はそれ自体が陰イオン(無機および低分子の有機イオン)を選択的に通過させるイオンチャネルを形成する複合体であり,その全体構造はGABA受容体(GABAR)と酷似しているが,個々のサブユニットはGABA受容体のそれらとは異なる分子であることが明らかにされている。GABARに作用点を持つと考えられている医薬品(ベンゾジアゼピン系抗不安薬,バルビタール酸系睡眠薬など)の多くは,GlyRに対しては影響を及ぼさないが,中にはGABARおよびGlyRの両方に作用するものもある(後述)2,3)。
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