特集 遺伝と臨床検査
II DNA診断
2.DNA診断の応用
4)非ケトーシス型高グリシン血症
呉 繁夫
1
Shigeo KURE
1
1東北大学医学部病態代謝
pp.98-102
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901288
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
●はじめに
非ケトーシス型高グリシン血症(nonketotic hyperglycinemia;以下本症)は常染色体劣性遺伝形式をとる先天代謝異常症の1つで,体液中に大量のグリシンが蓄積するのを特徴とする1,2).本症では意識障害,痙攣,呼吸障害などの重篤な中枢神経障害が生直後から急速に進行し生命予後が極めて悪い.本症のもう1つの特徴に多発地域の存在を挙げることができる.本症は比較的まれな先天代謝病の1つで,その頻度は欧米で約25万人に1人と推定されている2).ところが,フィンランド北部では約1万人の出生に1人とその発生頻度が際だって高い3).同地域において本症の出生前診断の要請は以前より強く,そのための確実で簡便な診断法の確立は臨床遺伝学上重要であった.
本稿ではまず本症の生化学的な検査法に触れた後,本症の遺伝子変異検索の実際を示す.次に,その臨床応用として本症の出生前DNA診断について述べてみたい.
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.