特集 外来でよく見る子どもの皮膚疾患―臨床写真で覚える!
湿疹・皮膚炎群
アトピー性皮膚炎:治療について―ステロイド・タクロリムスによるプロアクティブ療法
福家 辰樹
1
FUKUIE Tatsuki
1
1国立成育医療研究センターアレルギーセンター総合アレルギー科
pp.1241-1246
発行日 2022年8月1日
Published Date 2022/8/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000309
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はじめに
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)は,現在も小児において有病率が高く,われわれ小児科医が日常診療でしばしば遭遇する疾患の一つである。近年,国内外のガイドライン1)が充実し,プライマリケア医を含め多くの医療従事者にとって標準的治療を行える環境が整いつつあるが,一方でコントロール困難な症例が存在することも事実である。とくに中等症以上の患者では,ステロイド外用薬による一時的な改善や再燃をくり返し満足度が得られない場合を治療の不成功体験と捉えられると,患者の苦痛を取り除けないばかりでなく,ステロイド外用薬に対する不信感(ステロイドフォビア)・医療不信,さらには民間療法などの社会的問題へ裾野をのばす原因となりうる。ADはアレルギーマーチ,つまり後の喘息やアレルギー性鼻炎発症のリスクとなるばかりでなく2),経皮感作を通じて食物アレルゲンの感作や,食物アレルギーの発症リスクとなりうることが報告され3),皮膚炎をコントロールすることが疾患予後の改善や,ほかのアレルギー疾患の発症予防となる可能性がとくに小児において期待されている4)。さらにAD患児においてコントロール不良であるとQOLの低下のみならず,眼合併症や皮膚感染症5),さらにはうつ病や自殺企図6),心血管系疾患7)などさまざまな疾患リスクを増大させることも知られており,症状の増悪を予防することは小児内科診療の現場において大変重要である。
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