特集 症例から学ぶミトコンドリア病
ミトコンドリア異常症に含まれる疾患群
MELAS,MERRF
竹下 絵里
1
,
後藤 雄一
2
TAKESHITA Eri
1
,
GOTO Yu-ichi
2
1国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科
2国立精神・神経医療研究センターメディカル・ゲノムセンター
pp.582-586
発行日 2022年4月1日
Published Date 2022/4/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000120
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
MELAS
1.症 例
12歳の女児。乳幼児期の運動・知的発達は大きな問題はなかった。6歳時に学校健診で心電図異常の指摘があり,Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群と診断された。この際に受診した小児科で低身長に気づいた。10歳時に学習の苦手さから小児科で相談し,両側感音性難聴を指摘された。12歳時に発熱,嘔吐,全身性強直けいれん,意識障害があり,急性脳症の疑いで入院加療となった。入院時の頭部MRIで右後頭葉から頭頂葉内側に梗塞像を認め(図1),乳酸・ピルビン酸高値(血液:乳酸56.5mg/dL,ピルビン酸1.54mg/dL,髄液:乳酸46.7mg/dL,ピルビン酸2.0mg/dL)があり,MELAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes)を疑われた。筋病理ではGomoriトリクローム変法(mGT)染色で赤色ぼろ線維(ragged-red fiber:RRF),コハク酸脱水素酵素(SDH)染色でstrongly SDH-reactive blood vessel(SSV),チトクロームc酸化酵素(COX)染色で欠損線維を認めた(図2)。筋検体でのミトコンドリアDNA(mtDNA)解析にてm.3243A>G(変異率97%)を同定し,MELASと確定診断した。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.