特集 今知っておきたいゲノム医療と遺伝子治療―基礎から臨床まで
総論
遺伝子治療の副作用―遺伝子治療における安全性とは
内山 徹
1
UCHIYAMA Tohru
1
1国立成育医療研究センター研究所・成育遺伝研究部・疾患遺伝子構造研究室
pp.294-299
発行日 2022年2月1日
Published Date 2022/2/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000059
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はじめに
近年,難治性疾患に対する遺伝子治療は急速な発展を遂げている。患者の体外で遺伝子を導入し再び戻すex vivo遺伝子治療は,原発性免疫不全症(primary immune deficiency disease:PID)などへの造血幹細胞遺伝子治療,難治性白血病へのCAR-T細胞療法に加え,CRIPSR/Cas9による造血幹細胞に対するゲノム編集も報告されている。また,アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどを直接体内に投与するin vivo遺伝子治療でも,中枢神経疾患や神経筋疾患,血友病,網膜疾患などに対して,開発・承認が進んでいる。このように発展の著しい分野であるが,一方でウイルスベクターの染色体挿入による造腫瘍性や,体内における免疫応答など,遺伝子治療特有の有害事象が報告されている。これらは従来の安全性評価の枠組みで扱うことが困難であり,今後,遺伝子治療の開発を加速させるためには,遺伝子治療固有のリスクを正しく理解し,的確に評価することが重要である。
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