特集 周産期メンタルヘルス:最新事情
総論
妊産婦のメンタルヘルス
白土 なほ子
1
,
関沢 明彦
1
SHIRATO Nahoko
1
,
SEKIZAWA Akihiko
1
1昭和医科大学医学部産婦人科学講座
pp.818-821
発行日 2025年7月10日
Published Date 2025/7/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002214
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はじめに
現代の日本人女性の社会経済的特徴として,教育機会の拡大(30代の60%以上が高学歴1)),女性の就業率上昇(80%以上が継続的に就労2))など労働市場への進出が挙げられる。また,妊産婦の社会的背景の特徴として,晩婚化(2022年平均初婚年齢29.7歳3))・晩産化に伴う出生率の低下(2022年合計特殊出生率1.263)),核家族化などのライフスタイル・家族形態が変化している。出生数の経年的変化としては,年間約200万人であった第二次ベビーブーム(1973年前後3))には,女性は主に家事と育児の役割を担うことが多かったが,50年たった2023年の出生数は72.7万人となり,働き方は多様化した。加えて,生殖補助医療(ART)を使用した妊娠数は増え(2022年ART分娩率10%:ART妊娠77,206人/出生数770,747人4)),出生前検査の受検数も増加傾向を示している。これらの変化に伴い,妊産婦は孤立感や心身の負担,仕事と育児の両立困難などのため,子どもを産み,育てにくい社会となっている。今後,妊産婦のうつ傾向は増加していく可能性があり,産褥期のみならず,妊娠期から妊産婦の背景や養育に向けた気持ちを把握し,要支援リスクの高い妊産婦を抽出することが大切である。

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