特集 周産期メンタルヘルス:最新事情
総論
父親の精神的課題と対応
竹原 健二
1
TAKEHARA Kenji
1
1国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部
pp.813-817
発行日 2025年7月10日
Published Date 2025/7/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002213
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はじめに
ひと昔前までは,男性におけるメンタルヘルスの課題といえば,主に中高年の自殺対策をはじめとする職域・産業保健領域を中心としたものだった。しかし,その状況はこの15年程度で大きく変わり,周産期や母子保健領域における父親のメンタルヘルスも重要な健康課題と位置づけられるようになった。そのきっかけは2010年の「イクメンブーム」である。それまで,国や自治体によって少子化対策や男女共同参画社会の実現に向けたさまざまな啓発活動が行われてきた。しかし,それでもなかなか変わらなかった男性の家事・育児への進出,母親と父親の家事・育児の分担といった社会的な成熟が一気に進んだのである。さらに,2022年からは育児・介護休業法の改正が段階的に進められており,2025年にも育児休業取得状況の公表義務が適用される企業がこれまでの従業員数1,000人超から300人超に拡大されるなど,育児期の柔軟な働き方を実現するための対策が矢継ぎ早に打ち出されている。急速に顕在化し,議論を要することになってきた周産期における父親のメンタルヘルスの課題について考えるためには,上記のような社会の状況やその変化を念頭におくことは重要である。なぜなら,この父親を取り巻く環境や社会からの要請・期待は未だ変化し続けており,その変化に応じて今後も課題は変わっていくと考えられるからである。

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