特集 周産期救急システム―初期対応と災害対策
母体救急発症時の対応 母体救急で重症と判断すべき症状と疾患
仲村 将光
1
NAKAMURA Masamitsu
1
1藤田医科大学医学部産婦人科学講座
pp.674-678
発行日 2025年6月10日
Published Date 2025/6/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002173
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はじめに
母体は妊娠による生理的な体調の変化を認めることが多く,訴えだけで急変が起きているのかどうかを判断するのは困難である。母体の訴えが急変のサインであるのかどうかを適切に判断するためには,バイタルサインの評価が重要である。バイタルサインとは,呼吸,血圧,脈拍,体温,意識状態を基本として生体の生命維持機能を示す徴候のことであるのは周知のとおりである。妊産婦に限らず,ヒト生体の急変時にはA(気道;airway),B(呼吸;breathing),C(循環;circulation),D(中枢神経障害;dysfunction of central nervous system),E(体表観察・体温管理;exposure and environmental control)に異常所見を認めることが多く,系統的にそれぞれの異常所見を評価することが重要である。また,妊産婦特有の評価すべきポイントとして,ABCDE以外にF(家族・女性・胎児;family, female and fetus)とP(精神ケア;psychiatric care)の問題へも併せて対応する必要がある。

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