特集 母体救急医療・母体救命の進歩
各論
主な母体救急疾患とその対応 重症感染症,GAS
早田 英二郎
1
HAYATA Eijiro
1
1東邦大学医学部産科婦人科学講座
pp.276-279
発行日 2022年2月10日
Published Date 2022/2/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000063
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はじめに
妊娠中および産褥期に発生する,重症感染症の発生率は,全分娩の0.002~0.01%といわれている1,2)。重症感染症の原因として,妊娠中は絨毛羊膜炎や腎盂腎炎,細菌性肺炎が,産褥期は子宮内感染が多い1)。また,感染症に起因した敗血症性ショックから多臓器不全に陥った妊婦の死亡率は20~28%ともいわれ1),妊産婦死亡の重要な原因の一つとなっている。わが国の妊産婦死亡報告事業では,解析の完了した妊産婦死亡のうち,感染症が原因であるものが9%を占め,その割合は近年増加傾向にある3)。感染症による妊産婦死亡の原因としてもっとも多いのは劇症型A群溶連菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome:STSS)である。そのほかにもさまざまな感染経路,起因菌による妊産婦死亡が報告されている(表1)4)。
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